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Vol.10 美しいシワ、美しくないシワ

かつて、美容の世界ではこう言われた。
「美しいシワはあるけど、美しいたるみはない」と……。

ともかく、たるみはその時代、
一度始まってしまったらもう元に戻すのは不可能とされたから、
それは一刻も早く手を打ちましょうという警告だったのかもしれない。

そして確かにシワが美しい人っているもの。
たとえば、晩年のオードリー・ヘップバーン。

アフリカの難民キャンプで慈善活動をする有名な写真のオードリーの顔は、
正直シワだらけだったけども、同じような時代に活躍した大女優たち、
たとえばエリザベス・テイラーのような人が、
当時まったく不自然な仕上がりしかもたらせなかった美容医療に頼って、
若さにしがみついているように見えたのとは、対照的だった。

つまり、そういうふうにしがみついているように見えるくらいなら、
シワがあった方がいっそ美しい……。
その時代は誰もが感じていることだったと思う。

そして、オードリーがシワも気にせずに大きく笑っているのも、
またとても美しく見えた。
女優を引退してからは、セレブとして人前に出ていくこともなく、
穏やかに静かに生きた、その生き方も含めて美しい人だから、
その人生の年輪のようなシワまで美しいとされたのだ。

でも今、〝美しいシワ〟、〝美しくないシワ〟の定義は、
少し変わった気がする。
かつて、シワを美しくなくす方法はないに等しかったが、
今はもうそういう時代じゃない。
シワをあくまで自然になくしていく方法はちゃんとある。
選べるくらいに、いくつもの方法が。

まずうれしいことに、化粧品のリンクルケアが、
ペプチドの新しい処方などで、めざましい進化を見せている。

言うまでもなく、化粧品は、〝若返り〟ということにおいて美容医療に
追随することができるかどうかが大きなテーマになってきた。
そして、美容医療が〝プチ整形〟として大きく進歩してからは、
化粧品のエイジングケアが大きく水をあげられていたと言っていいが、
ここへ来て化粧品も大きく進化。
追いつく日が来るのも夢ではなくなってきたのである。
とすれば、今は努力によって美しさを保てる時代。
なのに、何もしないでいるのは、あまりにももったいない。
そういう意味で、〝放置されたシワ〟は、
それだけで美しいとは言えないのではないだろうか。
自然な若返りができるのなら、そのための手間を自分にかけて、
美しさと若さをともに得るのが、女性の生き方としてむしろ健全なのではないだろうか。

だから今、ハッキリ言いたい。

最初から諦めてしまっている人のシワは美しくない。
面倒だからと衰えを放っておく人のシワは美しくない。
逆にたとえ目尻にシワがあっても、
ちゃんと手間をかけられたシワは美しいのだと。
お手入れしているから臆せずに笑える人のシワは美しいのだと。

それが目で見てわかるようになってしまった時代であるのは間違いない。
だからもう美しいシワしかありえないのである。シワを諦めてはいけないのだ。
齋藤 薫 [美容ジャーナリスト]

女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。