【齋藤薫の美容コラム】Vol.48~Vol.50

2022.03.25

【齋藤薫の美容コラム】Vol.48~Vol.50

Vol.48 改めて検証した若く見える人と老けて見える人の差、そこにまつわる真実を!

ずいぶん前から、若く見える人と老けて見える人の差については、多くのことが語られてきた。差が出てくるのは35歳から、といったデータもあったし、その結果、50代では見た目の年齢差が20歳近くなってしまう、といった研究結果もあったと思う。 そして、肝心の見た目の年齢差を分けるのは、とても単純にコラーゲンの量の差だとか、鉄分の差だとか、はたまた血管年齢の差だとか、いろんな説があって混沌としている。もちろん1つには絞れない。様々な要因が重なってくるわけで、当然のこととしてスキンケアやメイク、ファッションの差も大きいのだろう。 でも最近になって、その要因となるものが少し絞られてきた。一つに、顎下。女優になれるかどうか、この顎下で決まるという説もあるくらい。手の甲を横にして顎下にそっくり入る位にここがすっきりくびれていないと美しく見えない、だから女優にはなれないと言うわけだ。確かに顔のフォルムを作る上で、この顎下のくびれはとても重要。ここにたっぷりと肉がついてくるとやはり年齢が上に見える。 太ると老ける・・・・・・は、確かに法則の1つではあるけれども、逆に言うなら首元やウェストなど、くびれるべきところがちゃんとくびれ、引き締まっていれば、人は決して老けては見えない。だからやみくもなダイエットはむしろ逆効果になったりしがちなのだ。ともかく顎下、頬杖をつくような要領で、両方の親指で顎下の肉をしごくように耳のほうに持ち上げる、そんなマッサージ癖をつけるだけでだいぶ違うはずである。 2つ目に、光。肌に光があること。形はないけれど、でもはっきりと目に見えているのが、肌から発光するような輝き。若く見えるか老けて見えるかは、それこそ一瞬の第一印象で決まってしまう。つまりパアッと明るい印象か、どんよりくすんだ印象か、それだけで、平気で見た目20歳ほどの差が生まれてしまうのだ。 その光を生むためには、細胞が元気なことと、端正な肌表面、そしてたっぷりの潤い、3拍子揃っていることが約束だけれど、でもこれなら誰もが実現できる。シワがないこと、たるみがないことはもちろん重要だけれども、ハッと目を引くほど明るい肌が一瞬の印象を決めてしまうのは、紛れもない事実なのだ。 そしてもう一つは、姿勢。常に運動している人、とりわけダンスをしている人が決まってとても若々しいのは、際立った姿勢の良さがもたらす印象ではないかと思う。不思議なもので、姿勢が良いと、極めて自然に口角が上がり表情も明るくなるし、目元も自ずとパッチリして、瞳が輝くと言うふうに連鎖的に若さを全身へと広げていくのだ。とすれば、これこそ一瞬で叶う若返り。 一日何回でも、気づいたらすっと背筋を伸ばす心がけを。身長が5センチくらい高くなるような、上から引っ張られてるようなつもりになって。やがてそれが癖になる頃には、10歳20歳若返って見えているに違いないのだ。 とは言え、本当の意味で若く見える人と老けて見える人を分けるのは、やはり生き方だとする考え方もある。生き方から変えていかなければ、見た目年齢の差を埋めることもできないのかもしれない。でもここまで上げてきた3つの要素。顎下にたるんだ肉がなく、肌から光があふれ、スッと伸びた姿勢に凛とした涼やかな印象が漂う・・・・・・それもやっぱり、美しい暮らしの結果ではないかと思うのだ。毎日の小さな心がけが、その人の暮らし方を決め、生き方を作り上げるのだから。 若く見える人が幸せにも見える、それはあらゆる理屈を超えた、永遠の真実なのだから。  

Vol.47 老化は、病気。だから治療ができる?!最新のアンチエイジングで、不老長寿の夢。

人生100年と言われて数年、いえいえ人間は本来120歳まで生きられるのだという新提言が今、世界中を騒がせている。確かに、何の病気もアクシデントもなく生き続けたら、人間は生物学的に120年は生きられるようにできているという話は以前からあった。でもそれが今現実の事として語られ始めたのである。 それは、化粧品や美容医療が唱えてきたアンチエイジングとは異なり、言わば老化を学問する人たちの研究が進んだ結果、老化も1つの 病気 だから、それを治療すれば人は歳を取らなくなるし、本当の若返りも可能と言い始めたのだ。 もちろん、再生医療を発展的に考えれば、人間はいつしか若さを再生することも可能になるのかもしれないけれど、それよりはるかに早く結果を出すのが、この歳を取らない治療。老化研究の第一人者が書いて世界的ベストセラーとなっている、「ライフスパン⁄老いなき世界」、その日本語訳が昨年秋に出版されて日本でも大きな話題になっているが、大いに盛り上がっているのはむしろ男性社会。今まで美容によるエイジングケアとは無縁と考えていた男性たちが、初めて飛びついたといっても良い理論なのだ。先を越されないように一応マークしておきたいが、要は、老化の引き金を引くのは長寿遺伝子サーチュインの衰え。これがブレーカーのスイッチをオフにすると家中の電気が消えてしまうように、全身にあらゆる老化症状が進んでしまうという発想。つまり逆に、サーチュインを活性化させれば単純に人は老いない、長生きするといった、非常に簡潔な理論である。 しかもこのサーチュインを活性化する方法はもう明快で、NADという物質が鍵となるが、これは直接は摂取できないので、その前駆体であるNMNで取り込むことが最速。サプリで取ることもできるし、点滴で注入することもできるのだ。まだ大変高価だが。 有り難いのは、肌や体力だけでない、内臓や脳の老化も防いでくれるとされること。 耳が遠くなったり、視力が衰えたりすることもそっくり防げるという理屈なわけで、これは信じてみたい気もする。そして年齢をさかのぼるような若返りもできるとされるが、同時に人間は、呼吸している限り酸化し、放っておいても老化していく運命にある。ただこのサーチュインの活性は細胞のサビを減らしていく働きがあるわけで、やがてもっと別の方法が見つかるかもしれないが、少なくとも「老化をサプリ治療する」という選択肢が生まれたのは確かなのである。もちろんこれを一生続けなければいけないが。 とは言え、人生120年とした時、一体いくつまで自らが納得できる美しさを保てるのだろう。 おそらくはそういう老化研究とともに、化粧品や美容医療も同じように進化し、未来の美容は、長寿遺伝子でも届かない肌の美しさや輝きをきちんと間に合わせていくようになるのではないだろうか。 どちらにしても私たちの運命は大きく変わる。少し前まで80年だった人生が40年も延びるとしたら、それを希望に変えるためにこそ、こうしたアンチエイジングの情報から目を離さないでいてほしい。こんなに短い期間で年齢事情が激変するなど、過去にはなかったのだから。そして今の大人世代はそういう意味で極めて幸運。ギリギリそういう老化治療の時代に間に合ったのだから。いやそれを幸運にするためにこそ、新しい年齢と取り組む時代が始まるのだ。  

Vol.46 まさに今 見えないところに手間をかけるべき時代。デリケートゾーンケアを考える。

フェムテックという言葉、聞いたことがあるだろうか? これはフィーメールとテクノロジーを合わせた造語。つまり女性特有の悩みに取り組む全く新しいジャンルである。 例えば、生理用品をもっとナチュラルで負担のない、安全なものにするとか、妊娠出産期間を快適なものにするとか。さらに、いわゆるデリケートゾーンを特別にケアするといった新しいアプローチ。はたまた、最近はアンダーヘアの処理、つまりVIO脱毛もこのフェムテックの中に組み込まれるようになってきた。だが新しいジャンルだけに、まだなんのことやら理解ができないという人もいるのかもしれない。 少なくともデリケートゾーンのケアの話など、数年前は誰も口にしなかった。私自身初めてそうした製品について説明を聞いた時、ちょっと頬が赤らむほどの気恥ずかしさを感じたもの。日本は、ビデを使う人すら極めて少数派であるように、欧米に比べ非常に立ち遅れていた分野であり、ある意味、話題にすることすらタブーだったからである。 にもかかわらず、ほんの数年でアッという間に確固たるカテゴリーを作ってしまった。今や女性誌は、フェムテックの話題であふれている。それは誰もが密かに気にしていたことの証。ひどく気にはなってはいたけれど何の情報もなかったから、放っておくしかなかったことの表れなのだ。 今主流のデリケートゾーンケアは、専用のウォッシュやローション、オイル等の製品がラインナップされているが、要は手付かずだったデリケートゾーンをより清潔にし、顔と同じように保湿もしましょうという提案なのだ。じつはそれが、女性としての健康にも、またアンチエイジングにもなるから、少しも恥ずかしいことではないのだという‥‥‥。 ちなみに、アンダーヘアの処理は20代30代にとっては今や常識になっている。マチュア世代には驚きだけれど、美容室に通うのと同じように、VIO脱毛のためにサロンに通うことが習慣になっているといわれるのだ。それもまたデリケートゾーンを清潔に保つ 身だしなみの1つ といわれれば、意識を変えざるを得なくなる。身だしなみの概念そのものが変わってきたといっても良いのだろう。 見えないところにこそお金をかけて美しく‥‥‥そういう価値観は昔からあって、だから「下着にお金をかけましょう」。それがエレガントな女性になる1つの決め手という提案に、心を動かされた人も少なくなかったはず。でも今、その  見えないところ が、自分自身の体にまで移ってきているということ。もちろん体の隅々まで丁寧に手間をかけて磨かれていることが真の美しさ、そういう提案はずっとなされてきたが、 隅々の意味 まで変わったのだ。本当に見えない、見せない隅々まで、というふうに。 約200年ぶりに星の巡りが変わり、「土の時代」から「風の時代」へと切り替わったとされ、物質よりも心、目に見えないものをこそ大切にすべき時代に入ったといわれる。そういう意味でも、自分自身にさえ見えないところにまで神経を行き届かせることが、新しい時代を心地よく生きるカギとなるのだろう。 「今すぐここで、水着になってみて」。ありえないことだけれど、たとえそう言われても、慌てない、躊躇しない、そのくらいに体の隅々までを磨いておくべき。それこそが究極の美容とされる時代になりつつあることも、どうか知っておいてほしい。
  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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