【齋藤薫の美容コラム】Vol.46~Vol.50

2023.09.25

【齋藤薫の美容コラム】Vol.46~Vol.50

Vol.50 老化は宿命ではなく、治せる病気。〝人が歳を取らない夢の未来〟が始まった!

老化するのは人間の宿命・・・それは、どうにもならないほど揺るがない常識だった。だから、人はもう一つの宿命として、あの手この手でその老化に必死に抵抗しなければならない。言うまでもなく、衰えを感じた日からエイジングケアを始め、やがてはそれが生活の一部となるほど、人生後半はアンチエイジングが最大のテーマとなっていたわけだ。

でもその、どうにもならない宿命が、宿命でないとしたらどうだろう。

じつは今、「老化は宿命ではなく、病気の一つである」という考え方が急浮上しているのだ。そう、病気ならば、治療ができる。そして治せる。治せれば、人は歳を取らない・・・そういう驚くべき説が、今にわかに脚光を浴びているのだ。
とうてい信じられないと、誰もが耳を疑うのだろう。すぐには理解できないほど、それは衝撃的な発見であったと言っていい。

『ライフスパン 老いなき世界』というタイトルの1冊の本から、それは始まった。
ハーバード大学医学大学院の遺伝学教授にして、長寿研究の第一人者であるデビット・A・シンクレア教授の著書で、世界中でベストセラーになっている。

そもそも人生100年も、様々な病気が医学の進歩で〝死なない病気〟になったからこそ、人の寿命は一気に延びるとされたわけだが、最初はまさに夢の実現!と歓喜した人にも、冷静になって考えた時、新たな不安が生まれていた。もしそうであっても100歳は健康寿命なのか、ただの寿命なのか、そこに大きな違いがあることに気づいて、新たな問題を抱えることになったのだ。100年健康なまま、幸せなまま生きていくのはそう簡単なことではないと・・・。

だから一方で明らかになった「老化は宿命ではなく病気の一つなのだ」という長寿研究の一つの結論が、時間をそう置かずに急浮上したことは、私たちにとって大変大きな救いだったと言っていい。
もちろん、治療として一般化するまでにはまだまだ時間がかかると言うけれど、おそらくこれを読んでいる人は皆そこに充分間に合うはずなのだ。しかもそのメカニズムも大方わかっているから、本格的な治療が始まるまで、今しておくべきことも見えてきている。

それが、〝若返り薬〟として大きな注目を浴びているNMNをサプリや注射でとり込むこと。NMNは、体内で自然に生成されている物質で、長寿遺伝子群(サーチュイン)を活性化させ、骨格筋、心臓、肝臓、さらには眼などもひっくるめて、多くの器官でミトコンドリアを改善させるもの。でもこの物質が年齢とともに減少していくから、様々な病気=老化を引き起こすことまでが確認されたのだ。ちなみにこの老化には、見た目や肉体の老化だけでなく、成人病やアルツハイマー、肥満なども含まれている。

いずれにしても、これまでエイジングケアは美容の範疇を超えられなかった。でも今、それがしっかりと医学と紐付いて、人はついに医学的に歳を取らない未来を手に入れることができるようになったのだ。

もちろんだからといって、美容上のエイジングケアの手を止めてはいけない。逆に、本当に人が歳を取らない夢が実現する可能性が見えているのだから、その実現まで、むしろ今まで以上に美容によるエイジングケアでその日を待つべきなのだろう。歳を取らない未来まで、美容で歳を取らない自分を保っておくべきなのである。


Vol.49 〝歳を取らなくてもいい時代〟に、私たちはちゃんと間に合った。それを知っておくことが最強のエイジングケア。

 前回のこのコラムでも、若く見える人と老けて見える人の違いについて語ったけれど、実はもう一つ、知っておくべきことがある。

 それは〝知っているか知らないか〟の差。今の時代「人はどれだけ若くいられるのか?」という現実を知らないと、それだけで大きな損をするという話をしたいのである。

 今や情報は溢れていて、とりわけ化粧品や美容に関しては、到底追いきれないほどの飽和状態が続いている。逆にそれがストレスになって、もう見ないようにしている人もいるのかもしれない。それはそれでいいと思う。情報に振り回されて、クタクタに疲れてしまうようでは本末転倒。必要のない情報もまた溢れているのだから。

 ただ絶対に知っておいてほしいことが一つある。それは、エイジングケアの進化。いやそんな当たり前のこと?と言うかもしれない。化粧品が日夜開発の手を止めていないこと、美容医療も確実に進化を遂げていること、なんとなく誰もが知っている。でもそれによって今、現実に何が起きているのか、その真実までは多くの人が知らないはずなのだ。

 結論から言うならば、ここ数年でエイジングケアの事情は劇的に変わり、本当の意味で歳を取りたくなければ取らずにいられる時代になった。単純にシワは化粧品で消えるように なってきたし、解決が最も難しいとされてきたたるみも、化粧品と美容施術で確実にケアできるようになり、これは美容の長い歴史においても最もエポックメイキングな出来事。

 特に化粧品で本当の若返りは難しいのではないかと考えていた人が多い中、事情ははっきりと変わったことをしっかりと伝えたいのだ。 一方で、美容医療の進化もめざましく、自然な若返りはいくらでも可能な時代。それを知っているか知らないかで、運命は大きく変わってくる。知らずにこれからの人生を生きていく人は、人生レベルの損をする、そう言いたいのである。人生100年時代へ向け、いよいよ人が歳を取らない時代の始まりであると。

 ハリウッドでも、エリザベス・テイラーやキム・ノヴァクなど20世紀に一世を風靡した女優たちは、やはり若返りに苦しんだ。美容整形も未熟な時代だったから、アンチエイジングすればするほど不自然となり、本来の美しさは残念ながら失なわれたと言っていい。でも今、メリル・ストリープやヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリングなど、21世紀の70代は驚くほど自然な若さを保っている。つまり20世紀のマチュア世代は、そうした新しい時代のエイジングケアに充分間に合ったと言うことなのだ。

 歳を取ることは、時代を問わずすべての人に同じ様に訪れる運命。でもエイジングケア次第で、運命は変えられる時代になったと言い切れる。なのに、以前のように最初から諦めていたら、あまりにもったいない。  意識の違いが若さの違いになることはこれまでも何度も語ってきた。でも意識だけではやっぱり限界があるとの考え方も、なくはなかった。意識だけでほんとに若返られるの? そういう疑問を持つ人も少なくなかったはず。でも、それを現実にするリアルな手段が整い、手に入れられる時代になったことを、ちゃんと知っておきたいのだ。

 ともかく私たちは、本当に人に歳を取らせないエイジングケアに、間に合ったとても幸運な世代、それを決して忘れないでほしい。

 知っておくだけで、意識が変わる。いざとなれば手段はいくらでもある。そういう時代になったのを忘れないこと。それが今最も重要なエイジングケアだと言えないだろうか。


Vol.48 改めて検証した若く見える人と老けて見える人の差、そこにまつわる真実を!

 ずいぶん前から、若く見える人と老けて見える人の差については、多くのことが語られてきた。差が出てくるのは35歳から、といったデータもあったし、その結果、50代では見た目の年齢差が20歳近くなってしまう、といった研究結果もあったと思う。

 そして、肝心の見た目の年齢差を分けるのは、とても単純にコラーゲンの量の差だとか、鉄分の差だとか、はたまた血管年齢の差だとか、いろんな説があって混沌としている。もちろん1つには絞れない。様々な要因が重なってくるわけで、当然のこととしてスキンケアやメイク、ファッションの差も大きいのだろう。

 でも最近になって、その要因となるものが少し絞られてきた。一つに、顎下。女優になれるかどうか、この顎下で決まるという説もあるくらい。手の甲を横にして顎下にそっくり入る位にここがすっきりくびれていないと美しく見えない、だから女優にはなれないと言うわけだ。確かに顔のフォルムを作る上で、この顎下のくびれはとても重要。ここにたっぷりと肉がついてくるとやはり年齢が上に見える。

 太ると老ける・・・・・・は、確かに法則の1つではあるけれども、逆に言うなら首元やウェストなど、くびれるべきところがちゃんとくびれ、引き締まっていれば、人は決して老けては見えない。だからやみくもなダイエットはむしろ逆効果になったりしがちなのだ。ともかく顎下、頬杖をつくような要領で、両方の親指で顎下の肉をしごくように耳のほうに持ち上げる、そんなマッサージ癖をつけるだけでだいぶ違うはずである。  2つ目に、光。肌に光があること。形はないけれど、でもはっきりと目に見えているのが、肌から発光するような輝き。若く見えるか老けて見えるかは、それこそ一瞬の第一印象で決まってしまう。つまりパアッと明るい印象か、どんよりくすんだ印象か、それだけで、平気で見た目20歳ほどの差が生まれてしまうのだ。

 その光を生むためには、細胞が元気なことと、端正な肌表面、そしてたっぷりの潤い、3拍子揃っていることが約束だけれど、でもこれなら誰もが実現できる。シワがないこと、たるみがないことはもちろん重要だけれども、ハッと目を引くほど明るい肌が一瞬の印象を決めてしまうのは、紛れもない事実なのだ。

 そしてもう一つは、姿勢。常に運動している人、とりわけダンスをしている人が決まってとても若々しいのは、際立った姿勢の良さがもたらす印象ではないかと思う。不思議なもので、姿勢が良いと、極めて自然に口角が上がり表情も明るくなるし、目元も自ずとパッチリして、瞳が輝くと言うふうに連鎖的に若さを全身へと広げていくのだ。とすれば、これこそ一瞬で叶う若返り。  一日何回でも、気づいたらすっと背筋を伸ばす心がけを。身長が5センチくらい高くなるような、上から引っ張られてるようなつもりになって。やがてそれが癖になる頃には、10歳20歳若返って見えているに違いないのだ。

 とは言え、本当の意味で若く見える人と老けて見える人を分けるのは、やはり生き方だとする考え方もある。生き方から変えていかなければ、見た目年齢の差を埋めることもできないのかもしれない。でもここまで上げてきた3つの要素。顎下にたるんだ肉がなく、肌から光があふれ、スッと伸びた姿勢に凛とした涼やかな印象が漂う・・・・・・それもやっぱり、美しい暮らしの結果ではないかと思うのだ。毎日の小さな心がけが、その人の暮らし方を決め、生き方を作り上げるのだから。

 若く見える人が幸せにも見える、それはあらゆる理屈を超えた、永遠の真実なのだから。


Vol.47 老化は、病気。だから治療ができる?!最新のアンチエイジングで、不老長寿の夢。

 人生100年と言われて数年、いえいえ人間は本来120歳まで生きられるのだという新提言が今、世界中を騒がせている。確かに、何の病気もアクシデントもなく生き続けたら、人間は生物学的に120年は生きられるようにできているという話は以前からあった。でもそれが今現実の事として語られ始めたのである。

 それは、化粧品や美容医療が唱えてきたアンチエイジングとは異なり、言わば老化を学問する人たちの研究が進んだ結果、老化も1つの 病気 だから、それを治療すれば人は歳を取らなくなるし、本当の若返りも可能と言い始めたのだ。

 もちろん、再生医療を発展的に考えれば、人間はいつしか若さを再生することも可能になるのかもしれないけれど、それよりはるかに早く結果を出すのが、この歳を取らない治療。老化研究の第一人者が書いて世界的ベストセラーとなっている、「ライフスパン⁄老いなき世界」、その日本語訳が昨年秋に出版されて日本でも大きな話題になっているが、大いに盛り上がっているのはむしろ男性社会。今まで美容によるエイジングケアとは無縁と考えていた男性たちが、初めて飛びついたといっても良い理論なのだ。先を越されないように一応マークしておきたいが、要は、老化の引き金を引くのは長寿遺伝子サーチュインの衰え。これがブレーカーのスイッチをオフにすると家中の電気が消えてしまうように、全身にあらゆる老化症状が進んでしまうという発想。つまり逆に、サーチュインを活性化させれば単純に人は老いない、長生きするといった、非常に簡潔な理論である。

 しかもこのサーチュインを活性化する方法はもう明快で、NADという物質が鍵となるが、これは直接は摂取できないので、その前駆体であるNMNで取り込むことが最速。サプリで取ることもできるし、点滴で注入することもできるのだ。まだ大変高価だが。

 有り難いのは、肌や体力だけでない、内臓や脳の老化も防いでくれるとされること。

 耳が遠くなったり、視力が衰えたりすることもそっくり防げるという理屈なわけで、これは信じてみたい気もする。そして年齢をさかのぼるような若返りもできるとされるが、同時に人間は、呼吸している限り酸化し、放っておいても老化していく運命にある。ただこのサーチュインの活性は細胞のサビを減らしていく働きがあるわけで、やがてもっと別の方法が見つかるかもしれないが、少なくとも「老化をサプリ治療する」という選択肢が生まれたのは確かなのである。もちろんこれを一生続けなければいけないが。

 とは言え、人生120年とした時、一体いくつまで自らが納得できる美しさを保てるのだろう。

おそらくはそういう老化研究とともに、化粧品や美容医療も同じように進化し、未来の美容は、長寿遺伝子でも届かない肌の美しさや輝きをきちんと間に合わせていくようになるのではないだろうか。

 どちらにしても私たちの運命は大きく変わる。少し前まで80年だった人生が40年も延びるとしたら、それを希望に変えるためにこそ、こうしたアンチエイジングの情報から目を離さないでいてほしい。こんなに短い期間で年齢事情が激変するなど、過去にはなかったのだから。そして今の大人世代はそういう意味で極めて幸運。ギリギリそういう老化治療の時代に間に合ったのだから。いやそれを幸運にするためにこそ、新しい年齢と取り組む時代が始まるのだ。


Vol.46 まさに今 見えないところに手間をかけるべき時代。デリケートゾーンケアを考える。

フェムテックという言葉、聞いたことがあるだろうか? これはフィーメールとテクノロジーを合わせた造語。つまり女性特有の悩みに取り組む全く新しいジャンルである。

例えば、生理用品をもっとナチュラルで負担のない、安全なものにするとか、妊娠出産期間を快適なものにするとか。さらに、いわゆるデリケートゾーンを特別にケアするといった新しいアプローチ。はたまた、最近はアンダーヘアの処理、つまりVIO脱毛もこのフェムテックの中に組み込まれるようになってきた。だが新しいジャンルだけに、まだなんのことやら理解ができないという人もいるのかもしれない。

 少なくともデリケートゾーンのケアの話など、数年前は誰も口にしなかった。私自身初めてそうした製品について説明を聞いた時、ちょっと頬が赤らむほどの気恥ずかしさを感じたもの。日本は、ビデを使う人すら極めて少数派であるように、欧米に比べ非常に立ち遅れていた分野であり、ある意味、話題にすることすらタブーだったからである。

 にもかかわらず、ほんの数年でアッという間に確固たるカテゴリーを作ってしまった。今や女性誌は、フェムテックの話題であふれている。それは誰もが密かに気にしていたことの証。ひどく気にはなってはいたけれど何の情報もなかったから、放っておくしかなかったことの表れなのだ。

 今主流のデリケートゾーンケアは、専用のウォッシュやローション、オイル等の製品がラインナップされているが、要は手付かずだったデリケートゾーンをより清潔にし、顔と同じように保湿もしましょうという提案なのだ。じつはそれが、女性としての健康にも、またアンチエイジングにもなるから、少しも恥ずかしいことではないのだという‥‥‥。

 ちなみに、アンダーヘアの処理は20代30代にとっては今や常識になっている。マチュア世代には驚きだけれど、美容室に通うのと同じように、VIO脱毛のためにサロンに通うことが習慣になっているといわれるのだ。それもまたデリケートゾーンを清潔に保つ 身だしなみの1つ といわれれば、意識を変えざるを得なくなる。身だしなみの概念そのものが変わってきたといっても良いのだろう。

 見えないところにこそお金をかけて美しく‥‥‥そういう価値観は昔からあって、だから「下着にお金をかけましょう」。それがエレガントな女性になる1つの決め手という提案に、心を動かされた人も少なくなかったはず。でも今、その  見えないところ が、自分自身の体にまで移ってきているということ。もちろん体の隅々まで丁寧に手間をかけて磨かれていることが真の美しさ、そういう提案はずっとなされてきたが、 隅々の意味 まで変わったのだ。本当に見えない、見せない隅々まで、というふうに。

 約200年ぶりに星の巡りが変わり、「土の時代」から「風の時代」へと切り替わったとされ、物質よりも心、目に見えないものをこそ大切にすべき時代に入ったといわれる。そういう意味でも、自分自身にさえ見えないところにまで神経を行き届かせることが、新しい時代を心地よく生きるカギとなるのだろう。

 「今すぐここで、水着になってみて」。ありえないことだけれど、たとえそう言われても、慌てない、躊躇しない、そのくらいに体の隅々までを磨いておくべき。それこそが究極の美容とされる時代になりつつあることも、どうか知っておいてほしい。

  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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