【齋藤 薫の老けない人。老けない話。】Vol.26~Vol.30

2020.09.06

【齋藤 薫の老けない人。老けない話。】Vol.26~Vol.30

Vol.30 誰のために美しくなるの?愛する人の目に美しく映るためと 考えるフランス女が眩しい

久しぶりに表舞台に登場したカトリーヌ・ドヌーブは、今年で75歳。さすがにちょっとでっぷりとした印象にも見えるけれど、女っぽくゴージャスな佇まいは健在だ。しかも、今回は世界中を騒がせているセクハラ告発騒動に対する反論で、ジャーナリストや作家、学者など、フランス人の女性文化人100名の連名で、今のようなセクハラ糾弾はちょっと行き過ぎ、”男性の口説く権利”を奪うことにならないかとメッセージ。暗に、「口説かれてこそ女」と訴えているようで、このフランスを代表する女優が、”現役の女であること”、今なお魅力ある女性を代表する存在であることを、改めて思い知らせた。

かつてエマニエル・ベアールが、「女はのべつまくなし美しくなくたって構わない。愛する男の目に最も美しく映っていることが女の使命だから」と、何かのインタビュー記事で語っていたことを、ふと思い出した。自分が美しくあること自体よりも、男の目に美しく映ることの方が大切・・・フランス女性はやっぱり”愛されること”が最優先されることを、印象づけたもの。自己満足の美しさでは意味がない。女として異性に見つめられ、魅了する美しさでなければ意味がないと。でもだから、フランス女は何だか艶っぽいのだとも思い知った。

今、美しく若くあるのはあくまでも自分自身のため。自分を勇気づけるため・・・そういう考え方が主流になっている。誰の目を意識するものでもない、鏡の中の自分の美しさに自信と元気を得て、前向きに生きるためのエネルギーとすること、それが美しくなることの一番の目的であると。

もちろんこれは、とても正しい。生命力そのものに変わる美しさは、本当にかけがえのないもの。だけれど、美しさは本来移ろいやすいもの。すぐ歯止めがきかなくなったり、基準を見失って、あらぬ所へ向かって行きがち。自分のためだけの美しさは、裏を返せば、独りよがりのものになってしまいがちだ。美しさには、やっぱり客観性が不可欠で、自分を見ていてくれる人が必要なのではないかと思う。

つまり、”誰の目も意識しない”は、やはり危険。人目を意識してこそ美しさは自ずとバランスが取れ、研ぎ澄まされてく。玄関を一歩出たら、どんな人の目をもぐるりと意識することもまた、美しく若くいるための絶対のルールなのだ。いや厳密に言うなら、「玄関を一歩出たら」というのも、間違い。

ある50代の主婦の証言・・・若返りの施術を受けるたびに、夫が優しくなる。おそらく何も気づいてはいないはずだけれど、明らかに態度が変わる。ちゃんと女性を見る目になると・・・。そういう変化に夫はまるで関心がないと思っていたけれど、全くそんな事はなかったと。だからこちらも逆に夫を男として改めて意識し、もっとキレイにならなきゃと思うようになったと言うのだ。妻がキレイになると、夫の扱いが変わる・・・男って、そういう意味でとても単純にできているのである。

だからこそ、まずは夫の目を意識すること。身近な人の目を意識すること。美しさが自分だけを満足させるものに留まっていては、つまらない。愛する人の目に美しく映し出されてこそ、色香が溢れ出す。それに改めて気づかせてくれたのが、セクハラ騒動だったことは、ちょっと皮肉だけれども・・・。


Vol.29 40歳の歌姫の早すぎる引退。そこに生まれる新しい年齢観と、私たち女が学ぶべきこと。

たった1人の特定の人物が、世の”年齢観”を大きく塗り替えてしまうって、実はとてもよくあること。かつて黒木瞳さんが40代になった時、40代はむしろ30代より女性として魅力的で、だから恋の現役であり続けるという新しい年齢観をもたらしたし、松田聖子さんが40代になった時、大人も可愛らしさをリアルに保ち続けられる、だから大人カワイイが成立すると言う年齢観を生んだ。

人生の折り返しのような40代で、年齢観が変わるのは女の人生においてとても大きなこと。そういう意味で、次に40代の意識を大きく変えるのは、紛れもなく今まさに時の人、「安室奈美恵」という人なのだろう。

まず、この人がもう40代なんて、それ自体信じられないほどだけれど、逆に言うとわずか40代で引退を決めてしまうなんて、早すぎる。今まで女の年齢観が変わる時、40代はまだこんなに若い、と言う意味での意識変革であったのに、この人が生み出そうとしている年齢観は、少し違う意味を持っているのだ。

外見は、驚くほど若く美しく、20代の頃と全く変わらないキュートな清潔感を保っているのに、早くも第二の人生を始めようとしている、そういう潔くも豊かな人生観を持つこと、それが新しい40代のあり方につながって行くのではないかと思うのだ。

今後この人が何をしようとしているのかは知らない。けれども、この才能ある美しい人は、まだ40代を始めたばかり。それこそ何でもできるし、何でも始められる。あらゆる可能性を秘めている。だからこそ今まで以上に大きな夢と希望で胸を膨らませているかもしれないのだ。10代の頃から冷静で大人だったと言うこの人には、人生の本質が見えているに違いないから。

今、人生90年、いや100年の時代がもう直ぐそこまでやって来ている。だからこれまでの私たちは、「40代はまだ全く若い、50代も60代も、女性の現役」そういうふうに、歳をとるのを先延ばしにすることばかりを考えてきたけれども、人生はそれ以上に長いと言う現実を、今のオトナは気づき始めていると思う。だから今の人生の延長ばかりを考えるのではなく、一生のうちに人生を2つ分、3つ分やるような気概が、これからの女性には必要なのではないかと思うのだ。確かに今、定年まで1つの仕事にこだわるのではなく、人生が長くなりそうだからこそ、思い切って40代50代で転職したり、独立したり、新しい選択をする人も増えている。

人生2つ、あるいは3つ・・・。でもその分だけ人は若さとエネルギーを増やさなければいけない。40代で何かを始める上で重要なのは、溌剌とした若さ。単に見た目が若く美しいと言うだけではない、パワーが漲るよう若さがこれからは必要なのだと思う。例えば肌のハリもただピンとしていれば良いのではない、輝きを持ったなめらかなハリ、ふっくら弾むハリが必要。いかにも健康なエネルギッシュな美肌がないと次の人生を始められない。だからこそメイクでごまかすのではない、内側から力を引き出すケアが不可欠。それもこれからのテーマとなるのだろう。

人生100年だとすれば、40代は折り返しどころかまだ前半。だからもう一度何かを始める・・・そんなことを教えてくれた安室奈美恵さんの引退。その気づきを無駄にしないで欲しい。この人はなぜ次の時代に進もうとしているのか。時代の寵児は、これからも目を離せない。女の年齢観どころかエイジング意識そのものを変えようとしているのだから。


Vol.28 大人は、景色のような美しさを持つべき。だから、花鳥風月のどれか1つを選んで欲しい。

美しさの定義は様々。ましてや表現の仕方は時代とともに変わるもの。女優のポートレートのように”作り込まれたラグジュアリーな美貌”を象徴的な美人とした時代もあったし、スーパーモデルのように全身のバランスが完璧である人を美人とする時代もあったと思う。でも今、その定義が大きく変わりつつある。

私は個人的に、いつもこう主張している。人も、景色のような美しさを持っていなければいけないと。美しい自然に不意に出くわすと、人はただ立ち尽くしてしまうけれど、そういう感慨をもたらす美しさをこそ尊いと思うからなのだ。実際に景色は、誰にも媚びず、ただありのままで見る人を感動させ、ずっとこのまま見ていたいと思わせる。それどころか、またもう一度見たいからと、何度もそこに足を運ばせる、そういう引力こそ、美しさの究極。だから私たち女性も、まさに景色にような美しさを持ちたいのである。

じゃあどうしたら、人は景色のようになれるのか?決め手となるのは、言うまでもなく素肌美。純粋に美しく透き通るような肌の美しさは、人を理屈抜きに引きつけ、うっとりと酔わせ、時には立ち尽くさせる。ずっと見ていたいと思わせ、またもう一度見たいと思わせる。人を癒したり、幸せにしたりもする。時には人の心を洗うような力さえも持ってしまう。まさしく景色のように。美人はそもそも人を威圧するような美しさを持ってしまいがちなのに、全く逆。景色が決して人を威圧しないように、穏やかで清らかな美しさで人を包み込むこともできるはずなのだ。

それを手に入れるために必要なのは、だからやっぱりエイジングケア。年齢を重ねることは、残念ながら清潔感を失っていくこと。肌からも、体型からも、声からも清潔感を失っていくのがすなわち老化なのである。つまり存在そのものが透き通るような清潔感に満ちた人こそが、実はもっとも若くも見える。美しい景色を思わせる清潔感を大人が得るためにこそ、エイジングケアがあるのだと言ってもいいくらい。

今や、飾り付けることが美しさではなく、無駄を省いて省いてドレスにもジュエリーにも頼らないのに美しい人をこそ、ゴージャスであるとする時代になっている。水で清められたような美しさこそ、最上級の美であると言う発想。ただそこにすっと立っているだけで、人の心に訴えかけるような存在美。それもまた透明感のなせる技。そのためにこそ、エイジングケアで透明度の高いなめらかな肌を作って欲しいのだ。

でもなぜ透明感?なぜ清潔感?それはひとえに生き方も、暮らし方も、気持ちまでが清らかな人に見えるから。そこまで含めてが、”景色のような美しさ”と言い換えてもいい。部屋はもちろん、バックの中も、息遣いまで、隅々までが美しいひとが、景色のような美しさで人を立ち止まらせるのだ。

花鳥風月という言葉がある。言うまでもなく美しい自然を表す言葉だけれど、例えば花でもいい、月でもいい花鳥風月のどれかを1つを決めて、これをテーマに景色のような美しさを目指して見て欲しい。それこそが最強のアンチエイジング、と言えるのだから。


Vol.27 人は、体型から歳をとる?だから始めて欲しい。例えば、背もたれを使わない生活・・・。

昭和の時代に比べて、40代50代の女性が驚くほど若くなった理由・・・もちろん、美容医療も含めたエイジングケアの進化による肌自体の若さが何より大きいし、ファッションや髪型の影響も少なくないと思う。

でも意外に見落とされているのが、体型。つまり、ウェストのくびれがなくなってきたり、お腹や背中に肉がついたり、という体型変化が実は大きく”老け感”に影響しているが、いわゆる中年体型になる年齢が、どんどん遅くなって来ているのは確か。これも、ファッションが変わってきたこと、自分はまだまだ若いと言う意識、それ自体が体型を維持させているとも言える。

ただ、顔のシワやたるみが気になる年齢になると、ついつい見逃しがちなのが、自分を少し遠目で引いてみること。それも年齢とともに、鏡の位置がどんどん近くなってくると言われるから。もちろん近くから見れば見るほど、肌状態が年齢を明らかにしてしまうのは否めないけど、人の印象はやはり全身で語られるもの。だからアンチエイジングの隠れた決め手は、やはり体型維持なのだ。

太っているか、痩せているかではない。むしろどれだけ女のカーブがあるか。余分なふくらみがないか。バストやヒップが、下を向いていないか。そして体のラインが緩んでいないか。そういうことも全てひっくるめての体型・・・。そこには肌や顔立ちと同じように、年齢がそっくり見えてくる。久しぶりに会った人に、「あなた変わっていないわね」と言われる時、そう言わせるものの半分は、 全身の体型から来る評価だと言われるくらい。

そこで改めて注目したいのが、体のラインの若さをもたらすものは何なのかということ。もちろん年齢や食べ物も大きな要素ではあるけれど、それ以上に重要なのはやっぱり意識なのではないかと思う。

実際20代の頃と体型が全く変わっていない50代の女性に、どうしたらその体型を保てるのと質問すると、意外な答えが返ってきた。特に何もしていない。モリモリ食べるし、炭水化物も大好き。ストレッチは欠かさないけれど、運動は人並み。そうそう、しいて言えば、椅子に座る時、背もたれに背中をつけないことかしら。

背もたれに背中をつけない この人は簡単にそう言ったが、多くの人にとってこれは大変な苦行。何分間か試しただけで、諦めてしまう人がほとんどなのだろう。でもその分だけ、これは大変な体型補正効果を持っている。姿勢が恐ろしく良くなるだけでなく、座ったままで、余分な肉があってはならないところから、つくべく所へ肉が自然に移動していく。

ふと思ったのが、和服を着てきた日本人はもともと背もたれなど使わぬまま、座る生活を続けてきたわけで、ひょっとするとこの”背もたれなし”でこそ正しく生きられ、正しい体型が自然に作られていくDNAを、私たちはもともと持っていたのかもしれないということ。

背もたれなしで美しく腰をかける、それをアンチエイジングのひとつの決め手としてどうか記憶していて欲しい。もしそれが1つの習慣になり、意識せずにできるようになったら、あなたの体は歳をとらない。結果、あなた自身が歳をとらない。アンチエイジングに本気になったら、鏡を離して自分をもっと遠目から見て欲しい。体のラインに年齢は出ていないだろうか。


Vol.26 ベッドの中で眠れずに悶々とする時間を人生から排除することこそ、美容

人間は、人生の3分の1をベッドで過ごす。そういう意味では何よりも重要かもしれない睡眠を、あなたは上手にこなしているだろうか。

今、眠れないと訴える人が増えている。睡眠障害に悩む人は一般的に5人に1人と言われるけれど、実際にはもっともっと多い気がする。周囲の人の多くが、上手に眠れないことを悩んでいたりするから。仕事が忙しい人ほど、社会的に多くの責任を抱えている人ほど、そしてまた、思慮深く知的な人ほど、上手に眠れない傾向があるのは確かなのだ。

それも、緊張状態が取れないままにベッドに入り、だからうまく睡眠に入れず、ベッドの中で自分にのしかかる問題や悩みをこねくり回してしまいがち。眠りたいのに眠れない、明日も仕事や用事がある、その焦りによって、心がどんどんネガティブになっていく中、暗闇を見つめて今考えなくてもいいことを引っ張り出して考えてしまう、そういうふうに二重三重にネガティブが重なるから、むしろ、心を老けさせる。ベッドの中で悶々とする時間ほど、精神を疲弊させるものはなく、またこれほど美しさに反するものはないからこそ、自分の人生からどうしても取り除いておきたいのだ。いずれにしても健全なる人生には本当にあってはならない時間。意識して削除すべく、どうしたら眠れるか、自分なりの方法を見つけて欲しい。

私はその1つの方法として、早起き生活を始めたと言っても良い。早く起きれば早く眠れる。そういう良循環を作るための早起き生活だった。そこで、自分の中にそういう生活サイクルを作るために、お風呂もスキンケアも、ともかく朝に回せるものは全て朝に回した。当然夜はもう寝るだけ、朝が早いから疲れて寝てしまう。このバタンキューが理想的なのだ。必ず、1.5時間の倍数で睡眠時間を決めることもバタンキューのコツである。

さらには、ベットに入ること自体が嬉しいベッド環境を作ること。安眠枕や低反発マットレスも大切だけれど、大好きな肌触りと良い香りを漂わせ、家の中の聖域にしておくことはとても大事。言うならばベッドを天国にしておくのだ。ベットに入る行為を幸福感とつなげておけば、自然に副交感神経が高まってきて睡眠モードに入っていける。緊張したまま体を横たえるから眠れないわけで・・・。

ちなみに私は、スイートオレンジとラベンダーのエッセンシャルオイルをいつも枕元に置いておき、3分間眠れなかったら、すぐにティッシュに数滴。それを吸い込むだけで、いつの間にか寝てしまっている。1番効くのはオレンジ。ただ3日間同じ香りを嗅ぐと効果がなくなるので、眠れない日が続く時はラベンダーと交互に使う。いざとなれば入眠剤があるからと、そこは気を楽に持ち、あくまでも心地よく眠りに入れる自分なりの工夫を探しておくことが、女の人生には不可欠なのだ。

ともかくすぐに眠れると、寝覚めも良く、1日機嫌が良い、だから元気に動き回れて、心地よく疲れているから、バタンキュー。それ以上の美容ってないはずなのだ。

  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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