【齋藤薫の美容コラム】Vol.11~Vol.15

2020.09.03

【齋藤薫の美容コラム】Vol.11~Vol.15

Vol.15 老けない人には、水を感じる。肌の中に水がサラサラ流れてる

肌の美しさでも有名なある女優は、一日に何度もお風呂に入り、「水がそばにないと何だか落ち着かない」と語っている。

そういえば、見るからに美肌の人の多くは同じことを言う。「お風呂が大好き」「水が好き」・・・。

そこにはきっと何かあると感じた。もちろん、美しい肌の鍵はうるおい。たっぷりの水分を含んだ肌ほど美しいのは、言うまでもないこと。でも、この”お風呂好き”と美肌の間にも、なんだか深い関係がありそうだ。

大きく遡れば、人類の祖先も海の中に生きていた。だからやがて、陸に上がって進化に進化を重ねてきても、人間がいつも乾きがちなのは、やっぱりもともと海から生まれ、母親の胎内でも水に包まれていたから。

水のそばにいないと落ち着かないという感覚も、そこから来ているのかもしれない。確かに私たちは、海を見たり、川のせせらぎを耳にしたり、自然の水を五感で感じるだけで、どこかホッとする。懐かしさを感じることさえある。

そもそも人間の体は70%が水でできていて、水なしには絶対に生きられない。水を恋しくて当然。水を求めるのは、人間の本能なのである。ただそういう本能にも個人差があり、”水を求める本能”が人一倍強い人ほど、肌が美しいという法則がそこにあるのではないか。

「水がそばにないと不安」と言った人は、なるほど確かに、肌に水を感じさせる。誰の肌にも水が存在するけれど、その人の肌にはとりわけ水の存在を強く強く感じるのである。それどころか、肌の中を水がさらさらと流れているように見える肌もある。肌の構造からいってもこれはひとつの真実。

健康な肌では、水が巡っている。”巡りの良い肌”こそが美しいと言われるのも、血流の話だけではない、水の巡りも含めての話なのだ。そして、血の巡りの良い肌は、明らかに肌色が明るく生命観に溢れているように、”巡り”ははっきり目に見えるわけで、だから、”水の巡り”が目に見えていても決して不思議じゃないのだ。

最もセクシーかつ美しいのは、「濡れた印象の女」・・・そういう法則がある。水をたたえているのはもちろん、濡れた唇、うるうるした瞳、そして濡れ髪・・・みんな美の象徴。美人を形容する言葉として長く語られてきた。いわゆる浮世絵の美人画に”洗い髪の女”を描いたものがとても多いのも、髪が濡れていることそのものに色気が宿るという証。

一方、少し鼻にかかったような声の持ち主も、それだけで色っぽいと言われるのは声が濡れているから。”体のあちこちに水を感じさせること”は、極めて高度なキレイのテーマなのである。そういう意味でも、水の量はそっくり”見た目年齢”に結びついてくる。若々しい人はみずみずしい。それは果実と全く一緒なのだ。

60代になると体の中の水分が60%に減るとも言われる。せめても水を愛して、お風呂に長く入って、いつも水をそばに感じながら生きたい。いつまでも老けないために。

Vol.14 ”嬉しい忙しさ”は 人をどんどん若くする

“忙しさ”にも、明らかに2種類ある。

単純に”嬉しくない忙しさと嬉しい忙しさ”。つまり、人を不機嫌にしたりピリピリさせる忙しさと、逆に人を明るく元気にさせる忙しさがあるということ。だから、忙しさを一緒くたにして、”忙しいことは美容に悪い”と 決めつけるのは、少し違うのかもしれないと思うのだ。

たとえばの話、大ブレイク中のタレントが、それこそ睡眠時間1~2時間で、分刻みにびっしりとつまったスケジュールをこなしていたとして、そういう生活が体に良いわけはないけれど、超売れっ子のタレントほど、めきめき美しくなることに気づくことがある。

もちろん”どこへ行っても人目にさらされ、注目されること”、それだけで人がめきめき美しくなるのは確かだけれど、その尋常ではない忙しさが、尋常ではないエネルギーを細胞に与え、細胞分裂のターボのスイッチをONにし続けるのもまた確か。

もちろんそれも、超多忙の一瞬一瞬を”自らの成功の証”として喜んでいるからで、いかに大きな成功のプログラムも、もしもそこまでの忙しさを嬉しく思っていなかったら、ひどい睡眠不足がそっくりストレスとなって、免疫力を低下させ、真皮のコラーゲンを直接的に奪っていったりするのだろう。

だから、大ブレイク中に倒れてしまったりするのは、忙しさに喜びを感じられなかった場合の歪みなのだ。どんな忙しさもそれが嬉しければ、あり得ないパワーに変わるはずだから。

一般社会で言えば、”毎日終電まで残業”というような”激務”も、もしそれを楽しいと思うなら続ければいいが、その忙しさに悲しみを感じるならば、すぐに何かを変えなければいけない。

そういう仕事のし方は健全ではないし、遅かれ早かれ実りのない報われない仕事からは逃げ出したくなるのだろうが、そういう負の忙しさからは自らを早く解放してあげないと心も体も危ない。

なのに同じように毎日5時間の残業が続いても、それが何だかワクワク嬉しい時間なら、体も心も蝕まない。本当に気持ちの向きひとつなのだ。

ではこういう比較はどうだろう。時間をもて余すくらいのヒマと、嬉しい忙しさはどちらが人にとって有益か?

もちろん睡眠時間が数時間では困る。でも時間が余りすぎて10時間もベッドにいる生活も健全とは言えない。少なくとも”明日の予定が決まっていない毎日”は、細胞エネルギーを減退させるというから、やっぱり”嬉しい忙しさ”の方に軍配があがってしまうのだ。 一体どういうふうに予定をこなしているのだろうと、不思議になる人ほど、本当に年齢よりも若い。「もう忙しくって忙しくって、やんなっちゃう」と笑っている人は、むしろどんどん若くなる。嬉しい忙しさは、毎日集中トリートメントをしているような即効的な生命感を生み、目に見えない上向きリフトアップ効果をもたらすのだろう。

だから大人の女は忙しさを楽しむ人が勝ち。あなたは忙しさを楽しめる女だろうか。


Vol.12 若返りを成功させる鍵は、むしろ”知性”と”センス”にある

女は、美しさにおいて、”2つの運命”を生きることになると思う。一つは”生まれ持った美しさ”がもたらす運命。もう一つは”歳の重ね方”がもたらす運命。つまり、歳を取る過程で、むしろ美しさを増やしていく人と、必要以上に美しさを減らしてしまう人がいる。だから、40代50代60代で、”大逆転”だって起こりうるのだ。

若い頃は、美人と呼ばれなかった人が、歳を重ねるほどに、むしろ若々しく美しい人と言われるようになることもあるからだ。

ハリウッド女優の”歳の重ね方”を見ても、それは明らか。例えばメリル・ストリープは、65歳になる今も、ほぼ毎年のようにアカデミー賞にノミネートされ、むしろ若い頃以上に光り輝いている。もちろん65歳には全く見えないものの、不自然なほどの強引な若さではない、とてもナチュラルな若々しさと美しさを見事にキープしている。

その一方で、いわゆるゴシップ雑誌には、「この人は大丈夫?」というニュアンスで、有名女優たちの”変貌”がしばしば取り上げられているが、いずれも無理な若作りで印象がすっかり変わってしまったことを、少々揶揄する内容。

言うまでもなく、若さに何が何でもしがみ付いてしまう”行き過ぎの美意識”に対するアンチテーゼである。もちろん中には、本当に美しく歳を重ねている女優もいる。

驚くほど若いけれど、その若さがあざとくない人が。自分の中に息づいている若さの決め手を、上手に強調していて、人によっては若い頃よりも魅力的なほど。その1人が、メリル・ストリープなのだろう。ちなみにこの人の場合は明らかに、”知性”で若さをコントロールしている。人としての良識やバランス感覚が、若さをとてもナチュラルなものにしているのだ。

そしてフランス女優の象徴的な存在、カトリーヌ・ドヌーヴも、自然な若さをキープしている1人。たまに、ふくよかになってすっかり貫禄がついてしまった姿を見せることもあるけれど、さすがは”世紀の美女”と謳われたひと。次に公の舞台に出てくる時には、ちゃんと美しく痩せ、自然な若さと美貌を備えてる。フランスで尊敬される大女優としての使命感が、その人を今なお輝かせるのだろう。さらに、この人に自然な若さをもたらしているのは、持ち前のセンス。フランス女がDNAとして持っている”類希れな洗練”といってもいい。それが、ちゃんと年輪を重ねながらも、誰もが憧れ続ける美しさを改めて構築しているのだ。

40代に入ったら、その人の若さ美しさを左右するのは、知性とセンス。その結果、大逆転も起きるし、さらに尊敬を集める美しさを生むこともできるのだ。だからこそ年齢を重ねる上で、闇雲に若さを増やそうとしてはダメ。今できる事を丁寧に積み重ね、プロの手に委ねる時も、心から信頼できるプロフェッショナルを、知性とセンスで選ぶこと。

大人の美しさは、内面を問われる・・・というのも、まさしくそういう意味なのである。


Vol.11 ある日突然キレイになる人には、 何が起こったか?

本当ある日突然、見違えるほどキレイになる人がいる。思わず「一体何があったの?」と聞きたくなってしまうほどに。以前ならばこういう時、周囲は迷わずきっとこう聞いたはず。

「新しい恋をしてるの?」。

人が突然キレイになるのは、やっぱりひとつの小さな奇跡で、だから”恋愛ホルモン”の不思議な力が働いたと考えるのが、いちばんリアリティがあったということなのだ。それも、恋愛し始めには”恋愛ホルモン”とも呼ばれる脳内物質PEAの分泌が一気に高まるから、という説がある。

これは”最強の惚れ薬”とも言われるもので、恋の始まりの独特な精神状態によって分泌が高まり、美肌効果やダイエット効果もあるとされる。もちろん女性ホルモンも同時に高まり、それだけで肌も瞳もうるうるするから、恋の始まりはやっぱり女を突然見違えさせるのだ。

でも最近は、”突然のキレイ”=”恋をしてる”、という方程式が絶対のものではなくなった。それも、恋愛ホルモンがもたらすミラクルに頼らなくても、”美容の力”で”突然のキレイ”を生み出すことができるから。

言うまでもなく、美容医療の進化で極めて自然に”見違えること”が可能になったのは何より大きく、そもそも”女性の年齢観”を塗り替えたのは、”プチ整形”の出現だったと思う。

今や、ほとんどの女性が”実年齢の7がけ” の気持ち年齢を生きていると言われるのも、また女性たちが”年をとることを恐れなくなった”のも、イザとなったら”プチ整形”があると、みんなが考えるようになったからなのだ。

もちろん一方には、化粧品のめざましい進化がある。プチ整形のような瞬発力はなくても、”見違えた”と言われる土台づくりには不可欠なのだ。

そこであらためて考えた、”突然のキレイ”を自分で生み出す方法・・・。

まず、人をハッとさせる決定的な決め手はずばり、発光感にある。肌の内側からスポットライトを当てているように光を放っていることが、人が見違えたと言える最大の決め手なのだ。でも正直、それだけでは相手をびっくりさせるまでには至らない。

さらに重要な決め手は”目に見えるキレイを2つ同時に叶えること”。

たとえば、肌がキレイになったことと、3キロ以上痩せてすっきりしたこと。どちらかひとつでは驚きまではもたらせないが、2つが組み合わさると、いきなり力強い美しさのインパクトが生まれて、「どうしたの?そんなにキレイになっちゃって!!」という歓声を生むのだ。

もちろん肌の”発光力”と、もうひとつ、リフトアップされた印象が組み合わされば、より大きな驚きをもたらすはず。似合う髪形に変えた上に、美肌になった。エクステまつ毛をつけた上に、引きしまった・・・。

2つのキレイが、3倍4倍5倍のキレイのインパクトを生むからなのだ。2つのキレイを同時に叶える・・・ これを意識して美容を始めると、あなたの印象は間違いなく変わる。”美しい人”のイメージが揺るがないものになるはずなのだ。それこそある日突然に・・・。

  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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