【齋藤薫の美容コラム】Vol.31~Vol.35

2020.09.07

【齋藤薫の美容コラム】Vol.31~Vol.35

Vol.35 ついに女性が年齢に勝つ時代。あなたは、いくつに見られたいか?

何歳に見えるか?これは女性にとって大きな問題だ。

大人世代ばかりではない。20代も30代も、ひょっとすると10代だって、自分がいくつに見えるのか、必要以上に気にしている。少なくとも9割がたの女性が、自分の年齢より若く見える事をテーマとしている。おそらく19歳の女性までが20歳と言われたくない、できれば18歳と言われたいという、実にデリケートな願望を持っているのだ。

そして当然のことながら、年齢を重ねるほどに、実年齢より若く見えたいと言う願望が強くなる。ましてや最近の、見た目印象そのものをエイジングケアとする傾向から、本当に信じられないほどの”若見え”が大きな潮流となっていて、60代でも40代にしか見えない女性は、今や少なくない。いや、生物学的に見て昔は絶対にあり得なかった”70代なのに50代にしか見えない若さ”も、今は奇跡ではなくなったのだ。

自分たちも、若く見えることそのものに強い自信を持っていて、マイナス10歳位では満足できないと言う人が増えている。とすれば、年齢とは一体何なのだろう。戸籍上の数字にすぎないものとなっていくのだろうか。見た目年齢との差に驚くための数字になっていくのだろうか。

そんな中で今年にわかに注目を浴びたグレイヘアの女性たち。以前もこのコラムで取り上げたが、その後もますます注目度が増し、社会現象にもなっている。なんと2018年の流行語にも選ばれているのだ。

ただ、トレンドだからとみんなが簡単にそこに手を出せるわけではない。なぜならばグレイヘアを選んだ時、決して実年齢より若く見えたりしないからだ。そういう意味での勇気もいる。すばらしいチャレンジとは言え、そこは今の時代のもう一つの大問題。いくら肌が若くて顔印象が若くても、グレイヘアは、ある一定の年齢以上の迫力を持ってしまうだけに、若見えはまずあり得ない。だから本音では憧れてもいるのに、その一点で躊躇する人が多いのだ。

でもだからこそ、非常にパワフルに見える事は確か。前回はグレイヘアの見た目のインパクトについて語ったけれども、さらに言えば意思の強さから来る”力強いオーラ”が見えるのもまた確か。それは年齢と言う概念をはるかに飛び越えたもの。ひょっとすると年齢よりも上に見えるかもしれないのに、美しさを増していると言う逆転現象が起きるのだ。

つまり、日本女性が驚くほど若く見えるようになった時代、必ずしも若く見えるだけが理想ではない、早くも逆のテーマが生まれている。若く見えること以上に、力強い美しさというものがあるということを、グレイヘアが教えてくれているのだ。年齢的に、もっと上に見えても、より美しく見えればいい、という新しい価値観が生まれていること、知っておいてほしい。

若く見えるという自信。年齢より上に見えてもいいという自信。また、年齢などには全くとらわれないという自信。どれも、新しい時代を生きていく上で、掛け替えのない自信。いずれかを持って生きて欲しい。

さあ、あなたはどういう選択をするのだろう。いよいよ、女性が年齢を克服する時代が始まる。


Vol.34 歳を重ねるほどに、派手になりたい。力強い洗練こそが、アンチエイジングなのだから!

服を買うときに、どちらにしようか迷った2着が、無難な服と、自分には少し派手かもしれないという服であったとしよう。あなたは最終的にどちらを選んでいるのだろう。

おそらく多くの人は、最後の最後に無難な方を選んでしまうのではないだろうか。無難な服の方が飽きが来ないから。頻繁に着れるから。そして何か、罪悪感がないから。

でもその理由、自分に言い聞かせるエクスキューズになっていないだろうか。本音では派手な方が欲しいのに、無難にこそ正解があると思い込んでいるから。でもそれで、本当にいいのだろうか。

ファッションの世界には、シンプルな定番服の方に洗練の元があるという法則は確かに存在する。でもそれは40代まで。ある年齢から先、まさしく50代から先は自分にとって少し派手なくらいがちょうどいいと言う話をしたいのだ。

年齢を重ねるほどに、髪型がどんどん重要になるのと同じ、ファッションにもそれ単体でパワーを持っていてオーラを放つような服を選ぶことが、すなわちアンチエイジングになるからなのだ。つまり、きちんとした手間のかかった髪型が、リフトアップ効果を持つように、パワフルな服もそれ自体がリフトアップのエネルギーを持っているからこそ、年齢とともに服の役割もさらに重要なものとなってくるのだ。

逆に言うならもっと若い頃は、ある意味エフォートレスな気負いのない服の方が収まりが良かったのが、年齢とともに力の抜けた服では持たなくなる。むしろ、若い頃はちょっと重く浮いて見えた服が不思議に似合うようになってくるのだ。それは年齢とともに、ある種の存在感が増して服に負けない強さを宿す一方、肌の緩みは服のパワーを必要とするようになるから。歳を重ねて、普段着のような素朴な服を着たらとても疲れて見えてしまうことに気づくべき。人と服は持ちつ持たれつ、だから年齢とともに人は派手になるべきなのである。

男性の場合に置き換えるとわかりやすいかもしれない。 例えばピンクのセーターにグリーンの蝶ネクタイ、みたいな華やかなオシャレは、ある程度年齢を重ねたときのほうがよく似合うのを思い出してみてほしい。不思議だけれど、歳を重ねるほどに派手なものが似合うようになってくるのは、男も女も同じなのである。

もちろん闇雲に派手になりましょうと言うのではない。トレンドを取り入れることも含め、人目を引くことを恐れずに勇気を持ってパワフルな服に挑んでみましょうと言いたいのである。例えば1つのお手本としたいのが、萬田久子さんのような攻めのオシャレ。年齢を超越した、洗練の極みのような服選びは、本当に見事。こと人を見ていると、なんだ、50代になっても、60代になってもこういう服を着てしまっていいのだと、改めて気づかされる。そして洗練こそがアンチエイジングだと言うことを思い知るはず。だから、ここは着てしまうと言う勇気と、人に見られてこそオシャレの醍醐味と言う心意気を持つべきなのだ。

思い切ってハードルの高いオシャレに挑むと、不思議なくらい、それはすぐ自分のものになる。次はもうちょっと高いハードルに挑んでみようかと思えるほど。それがどんどん洗練されていく絶対のコツ。そしてオシャレな服に挑めば挑むほど、自然に洗練が身についてくる。さあ美容のみならず、オシャレでもプラス志向のアンチエイジング、始めて欲しい。


Vol.33 なぜ表情豊かに 生きなければならないか。 もう一つの、決定的な理由。

暑くもないのに、大汗をかいている女性を見かけると、思わず話しかけてしまいそうになる。私もひどかったんですと。でもきっといつか良くなるからと、ただそれだけを言うために。

わからない人はわからないはず。一体何を言っているのか?でも知っている人は知っている。これは更年期障害の典型的な症状。 ホットフラッシュに悩む人は、なるほどと深くうなずくはず。

病気のようで病気ではない、だからこそ対策も曖昧で、本格的なホルモン療法からサプリまで、方法はいろいろあるものの、自分の場合は一体何をしたらいいのだろうと、多くの人が迷っている。

だから実際には、様々な症状が治まるまで我慢してしまう人も多いよう。

でも、それはだめ。ただ更年期が過ぎ去るのを待ってしまってはいけない。更年期はまだまだ先と言う人も、今すぐに対策を打たなければいけないほど、じつはちょっと深刻な問題が明らかになっているのだ。

更年期は数年で終わるけれど、そして肌荒れや老け感などにも、減ってしまった女性ホルモンのより戻しも期待できるから、お手入れ次第で解決できるけれど、更年期を機に深刻な減り方をするのが骨密度。

言うまでもなく女性ホルモンの低下が骨密度を一気に低下させてしまうからだけれども、骨密度は肌の水分量のように簡単には戻らない。非常に時間と量のように簡単には戻らない。

非常に時間と手間がかかる。いや、一応戻るとは言われているけれど、これ以上減らさないようにするのが精一杯という見方もある。

そして、絶対に対策しなければいけないという思いに至るのは、今までのように骨折しやすいとか、背がちょっと縮んでしまうとか、そういうレベルではない厄介な問題がクローズアップされたからなのだ。

それは、「顔のたるみが顔の骨密度の低下によって起こっているかもしれない」こと。

そうなのだ。当然だけれど、顔にも骨がある。だから顔の骨密度が減るのは当然のこと。ましてや形が複雑で薄い骨が多いことから、なおさら影響を受けやすいとも言われ、大きく顔立ちが変わるほど、骨の老化がたるみの原因になってるのではないかと言われ始めたのだ。

つまり、骨の再生の難しさを考えるとここはもう予防しかない。

カルシウムをしっかりとること、女性ホルモンの代わりをする大豆由来のエクオールという成分をサプリでとることも新しい方法として注目されているけれど、 骨のアンチエイジングには”負荷をかけること”もとても大切と言われる。いくらカルシウムが足りていても運動不足の人は骨粗しょう症になりやすいのだ。

じゃあ、顔の運動不足はどうするか。そもそも顔ってどうやって運動すれば良いのだろう?

やはりよく笑い、よくしゃべって、表情豊かに暮らすこと、これが何より大切なのだ。そして時々はじっくりと強めのマッサージ。肌に刺激を与えないよう、プッシュするだけのマッサージもいいかもしれない。肌をこするのではなく、圧をかけること。

ちょっと前まで盲点だったかもしれない、顔の骨粗しょう症予防。何歳から始めても早くは無い。そして何歳からでも遅くは無い。

とにかくとにかく意識をする事が何より大事。

たるみの原因はいろいろあるけれど、骨の衰えからも来ていたなんて。気がついた人から、気づいた瞬間から、始めて欲しい。いや意識するだけでも良い。顔の骨と、表情豊かに生きることを。


Vol.32 自分の一番美しい声で喋る心がけ、それはアンチエイジングの盲点だった。

若く見える人と老けて見える人の差がどこにあるか?これまで散々語られてきたテーマだけれども、多くの人が見落としている事が一つある。

人の印象を作るのは、見た目だけではない、じつはとても大切なのが、声。

たとえば、瀬戸内寂聴さんは、大正11年生まれ、なんと今年96歳になる。でも、時々テレビなどで見かけるお姿は、とうていその年齢には思えない。と言うよりも、年齢と言う概念を全く無意味なものにするほどの存在の輝きを放っている。

とは言え現実に96歳、この華やかな発光感は、ほとんど奇跡である。かくして、この人の魅力を語り始めたらキリがないけれど、 何よりもこの人を若く見せているのは、満面の笑みと、そして美しい声。

まさしくこういう声こそを、”鈴を転がすような”と表現するのだろう。澄み切った明るい高音が、文字通りリリリンと心地よい鐘を鳴らすよう。

講話の内容自体、もちろんこの上なく素晴らしいけれど、その鈴を鳴らすような声で伝えられる教えは、信じられない浸透力で人の心の中に染みこんでいく。何よりも傷んだ人をもたちまち元気にする力があるのには、驚くばかり。声とはいかに大切か思い知らされるけれど、声もまた96歳の声ではない。まるで20代の声・・・。

言うまでもなく声も歳をとる。女性の場合、年齢とともにだんだん声が低くなり、なんというか水分も減ってきて、ざらざらと乾いてくる。

これもまた、女性ホルモン分泌の低下が原因の1つとされる。だから、男性の場合は年齢とともに声が逆に高くなるとされるが、 やはりこれもホルモンバランスの変化によるもの。

性ホルモンが声質老化の鍵を握っているのだ。加えて声帯そのものの衰えとヒアルロン酸の減少、日々の喉の渇きなどのひっくるめて女の声は低くなり、かさついていく。

でもこれはあくまで一般論で、声の若さに大きな個人差があるのは確か。

瀬戸内寂聴さんが20代の声を持っているのも、つやつやの肌を見ればわかるように、今なお細胞分裂が活発である証。加えて、人として生きることをたくさんの女性たちに指南しているその使命感と言うものが、この人を女性としても老けさせないのだろう。

あるいは女性ホルモンの量にまで影響しているかもしれない。でなければ、肌はもちろん、あの声の透明感もありえないこと。肌にも声にもたっぷりの水分が見えるのはもちろんのこと、女性ホルモンの息遣いが聞こえるほど。

もう気づいたはず。なんだか若く見える人って要するに声が若いのだ。必ず、美しく明るく艶やかな声をもっている。

もちろん声が低いから老けていると言うことでは無く、あくまでも明るさと透明感が決め手。でも、美しい声を出そうとすれば女性の声はだいたい何トーンか高くなり、だから明るく透き通るのだ。

声からもう一度アンチエイジングを始めてみて欲しい。発声や歌の練習はそれ自体がエイジングケアにもなるし、喉からではなくお腹からきちんと声を出すような、腹式呼吸のトレーニングもまた若さにつながるはず。

ふと思ったのは、携帯電話の普及で女性は少し損したかもしれないということ。なぜなら家の電話では1オクターブも高い声を出して「〇〇でございます」と応対をする女性が多かった。

実はこれがとても大切なアンチエイジングだったのだ。だからもう一度改めて、美しい声を育てたい。あなたの一番美しい声を出す心がけ、それが印象のアンチエイジングになるはずだから。


Vol.31 若い頃に浴びる視線とは違う。あなたの存在美が、尊敬を含んだ熱い視線を再び浴びることになるのは、むしろこれから!

街で、人の視線を感じなくなった・・・そう気づいた時、無性に寂しく感じるかもしれない。もっと若い頃は、少しウェットな視線を投げかけてくる男性の目や、逆にドライで、ちょっとだけ意地悪な視線をよこす同年代の女性の目が、いちいち気になったはず。ところがある時から、パタリとそういう視線を感じなくなる。ひょっとするとそれも、1つのエイジングなのかもしれないからこそ、女は寂しい思いをすることになるのだ。

ただそういう時期は、どんなに美しい女性にもやってくる。”若い”というだけで放っていたオーラのようなものが、年齢とともに減ってしまう、それは誰にもあることで、悲観する必要はないのだ。なぜならば、街で視線を集める時代が、私たちにはまたもう一度戻ってくるから。

とても不思議なことに、街を歩いていても”中年男性”には目がいかないのに、白髪のダンディーな”初老の紳士”には、なぜだか自然に視線が吸い寄せられてしまう。ステッキをついていて、でも背筋がぴんと伸びていて、とてもお洒落な装いに、豊かな白髪。年齢は70代、いや80代かもしれないそんな男性を見つけると、それだけでハッとする。きっと誰もが同じように感じているはずなのだ。

もちろん、若くて美しい男性はやっぱり目で追ってしまったりもするけれど、中年男性がどんなにお洒落でも、いわゆる働き盛りの精悍なエネルギーを発していても、何だか見逃してしまう。ところが、60代後半位からだろうか、髪の7割方が白くなった素敵な紳士がいると、ちゃんと記憶に残っている。人は年齢を重ねると、もう一度視線を集めるオーラを宿すことになるのである。

女性も同じ。私自身、20代の頃にたまたま見かけた白髪の美しい老婦人のことが未だに忘れられない。それ以降も何度となく初老の女性に目を奪われ、その気高いオーラを記憶に刻み付けている。女性もまた、年齢を重ねてもう一度街で視線を集めるようになるのだ。いや若い頃に浴びる視線とは違う、尊敬を含んだ、熱く尊い視線を浴びるようになるのである。

ちなみに、私自身が今も忘れられずにいる女性はこんな佇まいだった。1人は、まだ60代か、50代後半かもしれない若々しい印象なのに、髪の7割以上が白髪で、しかもその豊かな白髪をとてもモードな髪型にアレンジしていて、目を見張るほどかっこいい。当然のことながら装いも洗練されていて、淡いグレーの髪によく映える、ブルーグレイが美しいロングトルソーのワンピースを纏い、強烈な存在感を放っていたもの。またある人は、70代か80代。オードリー・ヘプバーンが着るような白襟の黒いスーツに、真っ白な髪のちょっとクラシックな艶めくウェーブが、本当に美しかった。

共通点は言うまでもなく、際立ったお洒落と、そしてグレーヘア。年齢を重ねてからの手間のかかった美しい白髪は、ちょうどヒッチコック映画のヒロインに共通するプラチナブロンドのように、なんとも高貴で知性溢れる妖麗なインパクトを宿すのだ。

人は、年齢を重ねるほどに、良い意味での派手さを持つことになるのである。だから大丈夫。街であなたに向けられる視線は、必ず戻ってくる。その日まで、自分を丁寧に磨きたい。道行く20代の女性が、たまたま見かけたあなたを記憶の底に刻みつけるほどの、存在美のために。

  • 齋藤薫 / saito kaoru

    美容ジャーナリスト。
    女性誌編集者を経て独立。 女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人 日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)他、『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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